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なんていうか雑記

心境、近況、ライブ情報、歌詞など。雑記です。

ピッポ





ピッポ。ピッポという男の子。
ピッポは1989年、4月5日、午前2時に、
日本の岩手県の三陸海岸の養殖場に生まれる。
そう、リアス式。入り江。
ピッポの最初の記憶は、暗青い浮遊感に包まれていたこと。
冷たい。苦しい。ピッポは目覚める。
本能的に水面まで上がろうとするが、ピッポは泳ぎ方を知らない。
ピッポは再び気を失う。

ピッポは倦怠感をわずらいながら目を覚ます。
するとあたりはとても騒がしい。
パンチの効いた声とパンチの効いた声がぶつかり合っている。
そう、ピッポは競られていた。ピッポは東北まほろば市場にいた。
ピッポは自分が置かれている状況がわからない。
ただうるさいというイメージをもった。イライラする。
訳のわからないうちに、30代前半くらいの男のトラックに積まれる。


揺られる。

自分が何者なのか。
腹が減った。
喉が渇いた。
自分をどうするつもりだ。
排泄物を垂れ流す。
横には箱。前にも箱。箱箱箱。生臭かったのは覚えている。

ピッポは空腹からか再び気を失っていた。

気づくと明るい。まぶたを透かして赤色が見えた。
風が気持ちいい。まぶたを開くと沢山の生き物がいた。
広い整備された草原に風車が立っている。
草原では生き物が走り回っている。
みんな元気そうだ。ここはいいところだな。
すると市場にいた生き物と同じような形をした生き物が近寄ってくる。
今度は何だ。俺はここにいたいんだが。
男は端の自分から順番に、食べ物を配り始めた。
飛びついた。気づくと食べ終わっていた。
ピッポはすさまじい安心感を覚えて、寝てしまった。
そのまま月日は過ぎる。ピッポはそこで順調に育っていった。

3年後、ピッポは競走馬になっていた。
芝1200m、ピッポはファンファーレとともに懸命に走った。
しかし、まったく歯が立たない。なぜだ。
練習もした。食べ物も食べている。

ピッポは馬ではなかった。
それによってピッポは牧場で育んできた自分像を完全に失う。
ピッポは牧場を抜け出す。行く宛も無く。

人間はボクをおかしな目で見る。
ボクを見下している。目線の高さからだけではない。
冷たい感情のこもった目でボクを少し見て、すぐに目をそらす。
ボクが生きるこの世界はどうやら人間が大半のようだ。
人間はみたところ生物的地位も高い。
人間か。なんとか人間と仲間になれないだろうか。

ピッポは3日ほど歩き続け、とても大きな邸宅にたどり着く。
ここならボクを育てる余裕はあるだろう。とても暖かそうだ。
腹が減った。なにか食わせてくれ。さあ人間よ早く出て来い。
すると小さな人間が後ろから近づく。
人間は振り向いたボクを見て悲鳴を上げた。
ボクを助けてくれ。生きたい。僕を助けてくれ。
その人間は邸宅の大きな門を開けて走っていった。
門がしまる前にピッポも中へ入った。
キレイなところだ。左には池。右にはとても大きなお風呂がある。
人間が通っていった道をたどっていく。
すると太めの人間が出てきた。あごには毛が生えている。
なにか煙を吐いている。
その人間はボクの頭をなでた。微笑んでいる。
よかった、この人間はボクを冷たい目で見ない。
人間が出てきた中からは、とても暖かい空気が漏れている。
助かった。ボクはここで生きていくんだ。

彼らはボクのことを「ペット」と呼んだ。
太めの人間は主人というらしい。
人間にはオトコ、オンナがあるらしい。
それはどの生き物もだいたいがそうらしい。
その家で5年、いろいろ教わった。
ピアノという音を出すものも教わった。なかなか楽しい。
人間の使う言葉も少しだけ教わった。
あぁいつかボクが大きくなったらこの人たちに恩返しをしよう。
いつになるかわからないが。なんていい人間なんだろう。
ピッポはその日も当然のように自分の寝床へ行き、当然のように寝る。

次の日目を覚ますとピッポは、トラックの荷台に乗っていた。
暗い、体は拘束されている。
生まれて間もないころの記憶がフラッシュバックする。
なんで俺は今ここに居るんだ?
腹が減った。
喉が渇いた。
俺をどうするつもりだ。
とても嫌な予感がする。寒気がピッポを襲う。
突然車がとまり、トラックの後ろの戸が開く。まぶしい。
よく見ると主人が居る。よかった、俺を助けてくれるんだ。
すると主人はボクを強く殴った。「キモチワルインダヨ」。
周りの家族は笑っている。あれ、みんなどうしたの。
痛いよ。やめて。痛い。

ピッポは気を失った。

騒がしい。荒げない上品な声が飛び交っている。
ボクを中心にして。
オークション。ボクは再び競られていた。
主人はどこ?主人は?
主人は隣でボクに微笑みかけていた。
「ナンカオモシロイコトシロヨ」
主人はピアノを持ってきた。あ、ピアノ弾かせて。
ピアノは楽しい。再び会場は沸いている。
声も激しくなってきた。
やがて声が1つ残り、仕切る人間がその人間に何かを言った。
するとピッポはピアノの椅子から降ろされる。
奥に連れて行かれた。主人は手を振っている。
ボクはいらないの?もう必要としてくれないの?
ピッポは生まれて初めてわめいた。
するとさっきの声の主が現れて、ボクを殴った。
「サア、コレカラボクガシュジンダヨ」
怖い。人間は信用できない。ひどく残酷な生き物だ。
その人間はボクを「ヨンソクホコウノ人間」といっていた。
ピッポはすぐに抜け出した。
そして自分も人間だと言うことを知った。
嬉しいのか悲しいのか。大丈夫、俺はもう一人で生きていける。
歩き方も人間と同じようにした。腰が痛い。
うまく出来ない。背中も人間とは違い曲がっている。
人間。いつか復讐してやる。
そのとき自分をピッポと名づけた。
なぜかはわからない。
まずは自分を生んだ人間を探して・・。
ピッポはそれから姿をくらました。




ピッポは今17歳。どこに居るかはわからない。
きっと今も静かに復讐に燃えていることだろう。


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  1. 2006/06/25(日) 13:57:54|
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プロフィール

宍戸 翼

Author:宍戸 翼
The Cheserasera

宍戸 翼
1989.04.05生まれ
千葉県出身

なんとなくやった中二のアコースティックギター、
それまでで一番満足に出来る物が音楽だったから、
天命を感じるまま、高一でバンド活動を始める。
聴く音楽は、王道を避ける趣向から始まり、
次第に邦楽から洋楽へ。
フォーク、ニューミュージック、
エレクトロニカ、ハードコア、
クラシック、アンビエント、
民俗音楽、ドローンなどを通過し、J-POPへ回帰。
オリジナルバンドは様々なジャンルのバンドを経て、
現在で4つ目となる。

酒と友達と女の人が大好きで、
そのことばかり考えている。

自分だけの歌のはずが、君が泣いてくれて、
それが僕の、生きる価値になった。
母さん僕は社会で生きていけます。

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